高校を卒業してすぐの大学一年生のとき、皆でキャンプに行こうということになった
レンタカーを借りていこうということになったのだが
無駄にリーダーシップを発揮した僕が1人でレンタカーを借りにいく係になった
僕がレンタカーを借りにいく役を担ったのは基本的には問題ない
しかし問題なのは僕がレンタカーを1人で借りるのは前世ぶりで、
今世では初だということと
免許をとって間もない、ペーパードライバーの中でも際立ってペラペラしている状態ということだった
そして北海道のただただ広くて、基本人がいない道路しか運転したことがなかった僕が
ギガントスクランブルな東京の道路をうまく走れるのか、というところは疑問が残った
しかし僕は帯広自動車学校の教官に「仮免許界のビヨンセ」と賞賛されるほどのドライビングセンスの持ち主だったので、ヨユウだと思っていた
特にS字クランクの曲がり方の美しさは、業界でも群を抜いていたらしい
キャンプをしに行くのは神奈川の山奥の方で、
レンタカーは川崎で借りようということになった
僕は川崎に行き、無事にレンタカーを借りることに成功した
そこから最初に横浜の友達を拾い、目的地まで行こうという計画だ
しかしここから事件が起こった
当時のケータイの無料カーナビアプリ的なモノを駆使し、
僕は現在地からその友達の最寄りの駅までの行き方を調べた
すると3つの選択肢が出てきて、3つ目のルートだけ「このルートは有料道路を通ります」と書かれていた
ということは、1つ目と2つ目のルートは有料道路は通らないということだ
まだ有料道路は通りたくなかったので、僕は3つ目のルートを避け、
1つ目のルートを選択した
1人だったこともあって、画面を見ながらの運転は危険極まりないので
音声案内に従って走り始めた
「この先、300メートル先左方向です」
「暫く、道なりです」
「この先、交差点を左折です」
ちょ、パーフェクト!この音声案内、パーフェクト!!
音声案内の指示は、寸分の狂いもなかった
僕はこのアプリの音声案内に全幅の信頼を置くことにした
順調に走っていたその時、唐突に
その音声案内が衝撃的な一言を放った
「この先左方向、入り口です」
僕は思った
「入り口?」
言われた左方向を見てみると、
そこには大きく「首都高速入り口」と書かれていた
3つ目のルートだけが有料道路を通ると書かれていて、
1つ目のルートを選んだのだから
このルートが有料道路を通るはずがない
僕はなるほどと思った
僕が今まで運転したことのある高速道路は、帯広の空港の近くにあるやつだけであり、
ソコの高速道路は無料である
僕はそのノリでこの首都高速というやつも無料なんだなというハイパーポジティブな解釈をして、
ノリノリで入り口に入った
入り口のところでゲート的なものがあり、そこからオジサンが顔を出してきた
そのオジサンはマックの店員に勝るとも劣らないほどのスマイルで、
僕に向かって衝撃的な一言を放ってきたのである
「930円になります。」
僕は思った
「金かかんの!!!!!!!!!!?????」
有料道路を通らないルートを選んだハズなのに、
何故かお金を請求された僕はハイパーサプライズパニックである
しかしその場はもう逃げられない空気感が漂っており、
僕は930円という大金をそのオジサンに払ってしまった
てかその友達の家までそんな遠くないのに、高速に乗る意味も分からなかった
僕は全幅の信頼を置いていたハズのこの音声案内に、不信感を抱き始めた
しかし問題は、この音声案内しか頼るものがないということだ
車内には僕とこの音声案内しかいないのである
「この先3キロほど道なりです」
「左車線に入っておいて下さい」
「その先、左方向出口です」
あろうことか、この音声案内は光の速さでせっかく乗った高速を降りることを指示してきた
しかし僕は先述の通り、この音声案内に頼るしかない
「俺930円払ってるねんけど?」と思いながら、致し方なく光の速さで高速を降りた
高速を降りてすぐ、音声案内は僕にこう言ってきた
「この先、右折です」
「右折したら、右折です」
僕は思った
「ちょ、それってUターンじゃね?」
しかし何回も言うが僕は、この音声案内に頼るしかない
コイツの指示を無視したら、僕が友達の家に無事にたどり着く可能性は
どんなに多く見積もってもゼロになる
僕は致し方なく音声案内に従い、右折したあとに右折をしてみた
するとなんと、綺麗にUターンをするという結果になった
さっき通った道を反対側からまた戻ってきて「…」ってなってる僕に、
音声案内がまたしても衝撃的な一言を放った
「この先左方向、入り口です」
僕は
「まさか」
と思った
その左方向を見てみると、
そこには大きく「首都高速入り口」と書かれていた
何度も、何度でも言おう
ここでコイツの指示を無視してしまうと、僕は目的地にたどり着くことができなくなる
今考えると下道ルートで再検索すればいいだけの話だが、
当時の僕にそんな余裕などはない
「あまりにも高速降りてから乗るのが早すぎるから、
お金を払わなくてもいいみたいになるんじゃないか」
そんな意味不明な希望を薄く胸に秘めつつ、
僕は下唇を強く噛みながら、首都高の入り口に入った
すると、入り口のゲートからまたしても顔を出した
スタバの店員ばりに笑顔の爽やかなオジサンから、
抹茶フラペチーノもびっくりの、驚愕の一言が飛び出してきた
「930円になります。」
僕は
「デスヨネ!!!!!!!!!!!!!!!!」
というセリフだけ強く心の中で唱え、
そのオジサンに負けないぐらいの爽やかな笑顔で930円を支払った。
その先は、案の定またしても光の速さで高速を降り
一般道に降りた後は、至って普通の下道で友達の家に着くことができた
いや、びっくりするぐらい高速乗った意味なかったんですけど
僕は音声案内を完全に信頼して、
お金がかからないルートを選択したはずなのに
コイツは僕を裏切り、1,860円という血を僕に流させたのである
友達の家に着いて二秒後、
僕はその変な音声案内をすごい勢いで削除した
その後、1,860円の元をとるために
誰よりも本気を出してキャンプを楽しんだのは言うまでもない
この記事で僕が言いたいことは
やはり運転ナビは、信頼と安定の「NAVITIME」が良いということだ
因みにこの話は、そのあと暫くの間「すべらない話」として友達に認定を受け続けた
僕は1,860円という大金を払って、
「すべらない話」を1つ手に入れた形になる
その形には、少し満足している
佑介美山のあれはやられた話でした!!